・どんな職業か
異なる言語を使う人たちの間に入り、話されている言語を相手方の言語に訳し、相手に伝える仕事である。 通訳者は、国際会議、放送、商談、法廷など多くの分野で働いている。 通訳の仕方は大きく3つに分けられる。「ad hoc(アドホック)通訳」は、少人数の人が日常的な話をする場合などに、相手の言っていることを相互に伝えるもので、特に決められた通訳の仕方はなく、臨機応変に双方の言いたいことを伝える。 「逐次(ちくじ)通訳」は話し手がしばらくしゃべり、通訳者がそれまでの分を通訳する、というやり方で話を進めていく。話の内容を覚えていなくてはならないため、記憶の補助として、メモ(通訳ノート)を取る。著名な人が講演をするような場合の他、外交交渉・会議・商談・座談会などに使われ、内容も高度なことが多い。 「同時通訳」は、通訳者が「ブース」と呼ばれる通訳室に入り、発言者の言うことをヘッドフォンで聞きながら通訳していき、会場で聞いている人の耳に伝える方法である。聞きながら内容を理解し、同時に話さなくてはならないため、高度の集中力を要し、3人くらいのチームを組んで、15分~30分で交代する。使用言語数が多い会議や放送通訳の場合などに用いられる。
・通訳者に就くには
入職にあたって特別の免許や資格は必要なく、実績と能力によって仕事をもらうことができる、実力本位の世界である。一般的に大学卒業程度の学力は最低限必要とされ、大学、通訳学校、大学院などの通訳養成コースを修了した者が多い。 通訳技能検定の資格を取ると「通訳士」として認定され、仕事に有利になることがある。 通訳の仕事をするには、派遣会社に登録して仕事をもらう、知り合いや各種団体、学校関係から仕事を紹介してもらう、企業の募集に応募するといった方法がある。 高度な語学力だけでなく、一般常識、通訳する分野についての背景知識、分析力が求められる。
・労働条件の特徴
国際会議・国際セミナー、外国人との交渉・親善活動、テレビ局や外資系企業などで働いている。
高度な逐次通訳と同時通訳のできる通訳者は多くない。日本語-英語の通訳者でトップクラスの人は100人程度、フランス語、ドイツ語、中国語、ロシア語などは10人程度である。翻訳家、大学教員、文筆家など他の仕事と兼業している場合も多い。
就業者のおよそ9割が女性で、30~50歳代が中心である。
通訳者は、企業に雇用されている社内通訳者を除き、仕事のあるときだけ現場で業務を行うのが普通である。放送通訳者の場合はほぼ定期的に仕事がある。
報酬は、一日の仕事あたりいくら、という形で支払われる場合が多い。報酬の額には実績や能力によってかなりの幅がある。
今後は貿易の活発化や情報の国際化が一層進み、通訳者の絶対数は不足すると考えられる。
・参考情報
関連団体 日本通訳翻訳学会
関連資格
通訳技能検定