・どんな職業か
金属を溶かして鋳型に注ぎ込み、冷えて固まった後で鋳型から取り出し、目的に応じた製品に仕上げる。 この作業を鋳造といい、作業に従事する人を鋳物工という。 鋳物は、仏像や梵(ぼん)鐘などをはじめ、鍋や釜など日常生活用具をつくる技法として発達してきた。現代の鋳物製品は、これらの日用品だけでなく、各種の工作機械をはじめ、発動機、車両、船舶、航空機、電気機器、農機具などの部品として、さまざまな分野で幅広く使用されている。鋳物には鉄鋳物や銅合金鋳物、アルミニウム合金鋳物など各種の材質のものがある。 多く用いられる砂型鋳造では、まず、砂に樹脂や硬化剤を混ぜて鋳物砂を作る(混砂)。次に、鋳物の中空部を作るために、鋳型にはめこむ砂型(中子・なかご)を作り、鋳型枠に製品の模型である木型や金属型を置き、まわりに鋳物砂を詰めて主型(おもがた)を作り、中子をはめこんで上型と下型を合わせると、鋳型が完成する(造型)。 次に、銑鉄など鋳物の原料を配合し、溶解炉で熱して溶かす(溶解)。予定の成分調節を行い、適当な温度に溶かした金属を鋳型の中に注湯口から流し込む(注湯)。冷めたら鋳型をばらして、鋳物を取り出し、砂などを落として仕上げる(仕上)。
・鋳物工に就くには
入職にあたって、特に資格は必要とされない。中学や高校を卒業してすぐ入職する場合の他、最近は中高年齢者が他の職業から転職する例が多くなっている。 鋳物工として入職すると、まず砂処理の補助作業や造型作業の補助作業につき、徐々に仕事を覚えていく。また、各地の鋳物組合が1カ月から3カ月に1度くらいの割合で、講習会などの勉強会を行っている。 関連する資格として、厚生労働省が実施している技能検定に「鋳造技能士」と「金属溶解技能士」があり、資格を取得すると優遇されることが多く、転職・再就職にも有利である。 必要な資質としては、第一に、鋳型に溶かした金属を流し込んで成型するという鋳物の技法や技術に対して興味、関心を持っていることが大切である。そしてさらに、自分の能力を向上させる意欲を持っていることが求められる。
・労働条件の特徴
鋳物工は、自動車や電気機械器具、工作機械、産業機械などの重要部品を製造している大企業の中にも見られるが、その大部分は中小企業の鋳物工場で働いている。
鋳物は工作機械、自動車、造船、農業機械など広範囲な分野の素形材として使用されるために、工場は全国にある。
また、伝統的地場産業として存続している地域もある。近年は公害や労動力確保などの点から、企業の地方進出が目立っている。
賃金は日給または月給制が一般的で、溶解などの高熱作業に従事する場合は特別手当が支給されることが多い。
ばいじん、粉じん、騒音、振動などの作業環境は改善されてきているが、ちょっとした不注意から、やけどをしたり、品物を落としてけがをすることにもなり、作業は注意深く行う必要がある。
・参考情報
関連団体 社団法人 日本鋳造協会 http://www.foundry.jp
日本カタソ工業会 電話:03-3431-4062 FAX:03-3431-3188
日本鋳鍜鋼会 電話:03-5283-1611 FAX:03-5283-1613
社団法人 日本非鉄金属鋳物協会 電話:03-3542-4600 FAX:03-5565-0965
関連資格 鋳造技能士